英国王のスピーチ(The King's Speech)

【ストーリー】
舞台は第二次世界大戦前夜のイギリス。国王ジョージ5世の死去にともない、ふたりの息子のうち兄のデイヴィッド王子がエドワード8世として即位するものの、エドワード8世はまもなく「王冠を賭けた恋」といわれる前代未聞のスキャンダルの末退位してしまう。
その後を引き継ぎ弟のヨーク公アルバート王子がジョージ6世として即位するが、ジョージ6世は内向的な性格で、幼いころから吃音症に悩んでいた。王室の用命で幾人もの医者や専門家のもと矯正を試みるもことごとく失敗に終わり、その問題解決はオーストラリア出身の言語聴覚士であるライオネル・ローグに託されることになった。
ヒトラー率いるドイツとの開戦にあたり、一世一代のスピーチの結果は・・・


【スタッフ】
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース/ ジェフリー・ラッシュ/ ヘレナ・ボナム=カーター


【コメント】
ストーリーも俳優たちの演技も映像も秀逸で、非常に完成度の高い映画。
史実をもとにしているが、ウイットやユーモアもちりばめられていてけっしてシリアスではなく、鑑賞後感はむしろさわやか。
吃音症をかかえるジョージ6世ヨーク公アルバート)の自虐的なウイットを効かせたせりふはかなり好みだし、吃音症は幼少期のトラウマが原因であることが多いので深刻ではあるのだが、ライオネル・ローグ主導の珍妙な矯正トレーニングは笑える。
個人的に、イギリス旅行をしたばかりなので、観光してきたウエストミンスター寺院や戴冠式の椅子、バッキンガム宮殿や周辺の景色などにもぐっときた。



ちなみにエドワード8世の「王冠を賭けた恋」のお相手の「シンプソン夫人」が気になって調べてみたのでついでにメモしておく。
ウォリス・シンプソン(Wallis Simpson)はアメリカ・ボルティモア生まれ、20歳でアメリカ海軍の中尉と結婚するが、その後離婚、まもなく船舶仲介会社社長のアーネスト・シンプソンと2度目の結婚をする。
夫の仕事を通じてロンドン社交界とつながりをもったウォリスは、そこで王太子デイヴィッド(エドワード8世)と恋仲になり、そのうち王太子はウォリスを外遊に同行させたり、宝石を買い与えたり、自らの邸宅で同棲するなど入れ揚げるようになった。
一方の夫の方にも愛人がいたこともあり、ほどなくウォリスは再び離婚、それを受けて王座についていたエドワード8世は退位、翌年ふたりは結婚する。
王座を辞してまでのバツ2のアメリカ人との結婚は王室はもとより世間からの風当たりも強く、ふたりは表舞台から遠ざかり余生を送ることになる。
ウィンザー公爵となった夫を見送った14年後、ウォリスは90歳でその生涯を閉じた。